Essays
「反日教育」と集団心理を超えて
岸田 勝己
(NPO法人国境地域研究センター監事)
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このたびNPO法人国境地域研究センターの監事に就任した岸田と申しま す。みなさまにはよろしくお願いいたします。実は国境地域研究センターと関係 の深い境界地域研究ネットワークJAPANについて北海道大学スラブ・ユーラ シア研究センターの事務担当者としてお手伝いさせていただきました。その出 会いは定年後、北大グローバルCOE「境界研究の拠点形成」の事務局担当とし て、岩下先生に招請されてからのおつきあいです。様々なネットワークや活動が ここまで大きくなったこと本当にうれしく思っています。そのようなご縁もあ り今回、本センターの監事就任に至った次第です。
さて境界地域や国境問題に関わるものとして、いまとてもお隣の韓国のこと を気にしています。毎日、平々凡々と過ごしている年金生活の身で接する最近の メディア(特にテレビ)は韓国の「反日報道」をこれでもかこれでもかと流し続 け、それに対抗して「嫌韓」をあおる記事まであふれている様子を見ていて私な りにいろいろ考えてしまいます。振り返れば、1910年に始まる併合からの統治 の在り様が原因となっているのでしょうが、日本に併合され抑圧されたという 歴史が「反日教育」として連綿として続けられている面も少なくないように思い ます。
日本政府としてこれまで韓国に対して、法的な戦後補償に関して合意形成を 行い、歴代総理も「お詫び」や配慮を行ってきました。しかし韓国では政権交代 とともに、日本側では「解決したはず」の「歴史問題」がしばしば蒸し返され、 先方から突き付けられる要求がいつも、変わり、また強まってくるように感じら れます。これが国民性からくるものなのかどうかも含めて、私にはよくわかりま せんが、日本の一般市民としてはなかなかに理解しがたいところがあります。
私から見ますと、現在の「反日運動」は、歴史的な問題と安全保障上の管理問 題を同一視しており、日本製品の不買運動、日本企業に対する不買宣言、民間交 流の停止など、次から次へと話が広がっているようで特に、日本が輸出管理を強 化した以降、日本政府への「抗議」として韓国からの観光客が減少しており、特 に対馬では年間40万人を超えていた観光客が来なくなり、島の経済への影響 が大きいと聞きます。日本企業のみならず韓国の企業にもさまざまなところで 影響がでているようです。
政治と経済は別と言っても結局、観光事業、とくに人の出入りは政治や国策の 影響をかなり受けるようです。中国もまたかつて韓国への渡航を制限したこと がありました。昨今のメディア報道を見て改めて感じるのは、「人間の行動は状 況に適応的な行動をとる」ということのようで国家の意向が反映されると、集団 心理がより強くはたらくようで反対行動をとりにくいという構造は日本人のみ ならず、韓国や中国でも同様のようです。
国境地域研究センターは、このような動向に左右されない、人と人とのおつき あいができることをサポートするために日々、活動を続けています。私もなんと か貢献できればと考えています。
[2019.10.14]