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民族問題と「心」の国境?―消されているバングラデシュとの国境線

田村 慶子(JCBS理事)


 「ミャンマー西部にあるラカイン州はバングラデシュと国境を接している」―一般の地図にはそうなっているし、私もずっとそう考えていた。 ところが、2015年3月18日にヤンゴンから新首都ネピードーに行くために乗った国営ミャンマー航空の機内誌の路線地図では、ラカイン州はインドと国境を接している!

 これは単なるミスか、それとも意図的なものなのだろうか?

 2011年からのミャンマーは急激に変貌を遂げている。車(それも新車)の増加、オフィスビルやホテル、住宅の建設ラッシュ、インターネットの普及 (5年前までは厳しい制限が科されていた)、停電の心配は皆無となった。人々の表情も明るく、街は活気に溢れている。しかしながら、政治的な民主化はまだまだで、 軍事政権が連邦団結発展党と名称を変更し、国会の安定多数を確保した上で「限定的な民主化」が行われている。ただ、「限定的民主化」とはいっても、人々は以前に比べればかなり自由にものを言えるようになった。 新聞や雑誌は何種類も発行されていて、なかにはかなり政府に批判的な論調の新聞もみられる。

 このような「限定的民主化」の副産物のように現れているのが、仏教至上主義的な風潮であり、イスラム教徒への反感である。2012年頃から反イスラム教徒の暴動がラカイン州で頻発し、ヤンゴンでも「イスラム教徒は信用できない」と平然と口にする人が増えている。

 この国のイスラム教徒の多くがインド系で、イギリス植民地時代にベンガル地方から流入した。初期に流入したムスリムの中には、アウンサン将軍とともに独立運動に身を投じた人も少なくない。しかし、バングラデシュで人口が急増し、 隣のラカイン州に非合法移民を多く送り出すことになり、仏教徒との間で緊張を生み出した。言論がかなり自由になったことで、あらゆる不満をイスラム教徒のせいにする仏教徒が目立つようになったのである。

 「紛争を解決するためには、イスラム教徒はみな帰国すればいい」-これはラカイン州の政治家(仏教徒)の発言である。最近流入した非合法移民も以前からずっと住んでいるイスラム教徒も同一視され、「信用できないイスラム教徒」に分類されている。

 国営ミャンマー航空の路線地図は意図的なものかもしれない。

[2015.03.26]



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