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新理事長挨拶


みなさま、こんにちは

理事長に就任することになりました田村慶子と申します。2023年3月に北九州市立大学法学部を定年退職し、現在は名誉教授、さらに特別研究員として大学で引き続き研究を継続しています。

さて、アジア研究者・人類学者である鶴見良行という名前を聞いたことがありますか?もう25年くらい前に亡くなりましたが、1982年に出版された『バナナと日本人』は、安くて栄養のある果物バナナが、その産地であるフィリピンのミンダナオ島でどのよう栽培されているのかを克明に描くことで、日本の食卓とフィリピンを繋いだ名作です。今でも読み継がれています。

彼のもう1つの代表作が1993年出版の『ナマコの眼』です。 ナマコは、比較的温かい地域の浅い海に生息しています。ナマコは日本を含むアジアや南太平洋で広く食され、日本では酢の物にしますが、中華料理では高級食材です。 ナマコは眼がありません。眼がないナマコを主人公にしたのは、もしナマコに眼があったなら、見えたであろう、ナマコを売り買いする様々な人々の歴史が書かれてあるからです。南太平洋のカナカ、チャモロ、フィジー島民、オーストラリアのアボリジニー、ニューギニアのパプア人、東南アジアのマカッサル人、ブギス人、バジャウ人、スルー島民、朝鮮人、中国人、アイヌも登場します。 このような人々の歴史は、権力を持つ人が作る国家史観・中央史観では周辺の歴史として描かれるか、ほとんど無視されます。国家権力が作った海の境界をやすやすと越えて様々な人々が繋がってきた長い豊かな歴史を、ナマコはその眼を通して語ります。

わたしたちの国境地域研究センターも、ナマコの眼だと私は感じています。国境地域で生じている様々な問題の解決や国境地域そのものの発展に寄与するためには、国境地域・境界地域に暮らす人々の長い豊かな歴史と、国境を越えて繋がってきた人々の営みを学び、そこから研究を始めるという貴重な組織だからです。

私も早く一人前の立派なナマコになり、センターの発展に寄与できるよう頑張っていきたいと思います。 どうぞよろしくお願いします。


特定非営利活動法人、国境地域研究センター
理事長 田村慶子